48V化が切り拓く新時代: ソフトウェア定義型車両を支える新たな電源基盤
ソフトウェア定義型車両(SDV)やインテリジェントEVの進化に伴い、現代の自動車には電動パワーステアリング、電動コンプレッサー、アクティブサスペンション、ブレーキ・バイ・ワイヤなど、多くの高出力電装システムが搭載されるようになっています。その結果、従来の12V電源アーキテクチャは供給可能な電力や効率の面で限界が見え始めており、自動車業界では将来の車両プラットフォームに対応するための新たなソリューションが求められています。
近年、48V電源システムはマイルドハイブリッド車向けの補助技術から、次世代インテリジェントモビリティを支える重要な基盤技術へと急速に進化しています。
12Vから48Vへ: 単なる電圧向上ではない進化
48V車載電源システムの概念自体は、決して新しいものではありません。欧州の自動車業界では2011年頃から関連技術の標準化が進められてきました。しかし、コストやエコシステムの成熟度といった課題から、主にアイドリングストップ機能やマイルドハイブリッド、特定のシャーシ制御モジュールに限定して活用されていました。
しかし現在、その状況は大きく変わりつつあります。
車両の高度化に伴い、車載電子システム全体の消費電力は増加を続けています。また、新世代の車両プラットフォームでは48V低電圧アーキテクチャの採用が進み、48Vシステムは補助的な存在から車両電源インフラの中核へと移行し始めています。
48Vが注目される理由は、電力供給能力、効率、安全性のバランスに優れている点にあります。
同じ電流条件で比較した場合、48Vシステムは12Vアーキテクチャの約4倍の電力供給が可能です。これにより高出力負荷への対応が容易となるだけでなく、ケーブルの細径化やワイヤーハーネスの軽量化も実現できます。その結果、車両効率の向上や設計自由度の拡大、実装スペースの最適化につながります。
さらに48Vは、安全特別低電圧(SELV)の国際基準である60V DC未満に収まります。そのため、高電圧システムで必要となる高価な絶縁対策や保護機構を最小限に抑えながら、大幅な性能向上を実現できます。
現在では、多くの自動車メーカーが48Vバックボーンと12Vサブシステムを組み合わせたハイブリッド構成を採用しています。高効率なDC/DCコンバータにより既存システムとの互換性を維持しながら、将来の高性能電源アーキテクチャへの移行を可能にしています。

高電圧化がもたらす新たな設計課題
48Vへの移行には多くの利点がある一方で、新たな設計課題も発生します。
システム電圧が12Vから48Vへ上昇すると、MOSFETをはじめとするパワー半導体にはより厳しい要求が課せられます。より高い動作電圧への対応に加え、配線システム内の寄生インダクタンスによって発生する過渡的な電圧スパイクにも耐える必要があります。そのため、従来40V程度だったデバイス耐圧は75Vあるいは100Vクラスまで求められるケースが増えています。
しかし一般的に、高耐圧化はオン抵抗の増加やスイッチング損失の増加といった課題を伴います。エンジニアには、効率、熱性能、長期信頼性をいかに両立するかが重要なテーマとなります。
このため、自動車メーカーやTier 1サプライヤーにとって、車両設計の初期段階から部品評価や電力変換回路の最適化、熱設計の検証を行うことが、システム性能と信頼性を最大化するための重要な取り組みとなっています。
機能安全がさらに重要に
48Vアーキテクチャの普及に伴い、機能安全への関心も高まっています。
自動運転レベル3以上の実現に向けては、ステアリングやブレーキ、シャーシ制御などの重要システムが、主要な電源経路に障害が発生した場合でも動作を継続できなければなりません。こうしたフェイルオペレーショナル(故障時にも動作を継続する)機能は、次世代車両における不可欠な要件になりつつあります。
そのため、従来の単一電源経路構成から、冗長性を備えた電源アーキテクチャへの移行が進んでいます。電子ヒューズ(eFuse)による障害の切り離しや、アイデアルダイオードコントローラによるシームレスな電源経路の切り替えを活用することで、単一点故障によるリスクを低減し、システムの堅牢性を向上できます。
また、バッテリーマネジメントシステム(BMS)の役割も進化しています。現代の48V BMSは単なるバッテリー監視装置ではなく、高電圧バッテリー、ゾーンコントローラ、エネルギーマネジメントシステムと連携しながら、車両全体の電力最適化を担う重要なコンポーネントとなっています。
48Vは次世代車両の基盤へ
現在の市場動向を見ると、48V電源システムはもはや過渡的なソリューションではありません。
12Vシステムの電力供給能力や効率面の課題を解決しながら、安全性、コスト効率、拡張性を兼ね備えた次世代車両の基盤として、新たな位置付けを確立しつつあります。
今後、先進シャーシ制御、ブレーキ・バイ・ワイヤ、自動運転機能、快適性向上機能の普及が進むにつれ、48Vエコシステムはさらに成熟していくと考えられます。将来のインテリジェントモビリティを形作る上で、自動車メーカーやサプライヤーにとって、パワー半導体、BMS、機能安全要件の最適なバランスを実現することが、今後も重要な課題となるでしょう。
アヴネットは、こうした課題の解決を支援する技術パートナーとして、次世代車載システムの開発を幅広くサポートしています。