マシンビジョン市場は爆発的な成長を遂げることになるか?

世界のマシンビジョン市場は、今も着実な高度成長の段階にあります。BBCリサーチが発表した予測によると、世界のマシンビジョン市場は2018年に約160憶ドルで、年平均成長率9.2%、2023年には248憶ドルに成長するとあります。
この成長率は特段目を引くものではないかもしれませんが、2002年以降、平均2けた成長を続けている事実を考慮すると、市場の強い勢いは明白です。
よりいっそう注目すべきは、マシンビジョン市場全体が現在、さらなる加速度的な成長につながる転換点をもたらすと期待される、二つの大きな変化を経験していることです。
変化の一つは、マシンビジョンの主流技術が、PCから組込フレームワークに移行していることです。数年の開発を経て、従来のPCベースのビジョンシステムは、すでにかなり成熟しており、いくつかの明確な優位点があります。例えば、性能の高さ、比較的複雑なシステム機能を実装できる能力、より豊富なソフトウェアとハードウェアの資産を利用できることです。対照的に、エンベデッドビジョンシステムの性能は限定され、コスト、電力消費、サイズ、外観のために制約されることがよくあります。克服すべき多くの技術的課題があることは、言うまでもありません。しかしながら、マシンビジョンを開発する究極の目的は、視覚機能を様々な組込みシステムに取り込むことであり、これによってマシンビジョン -かつては「概念的で利用できない」と考えられていたもの- を生活の異なる側面に適用でき、実用可能ですぐに利用できるようにすることです。「ユビキタス」市場の見通しは、実際のところかなり魅力的です。これが、相当多くのプレイヤーが近年、エンベデッドビジョンに注力しており、マシンビジョンの主流技術において共同で変化を促進している理由です。
マシンビジョン市場の二つ目の変化は、人工知能(AI)によって促進されています。視覚処理はすでに、機械学習のようなAI技術にとって、一級の適用シナリオとなっています。機械学習や最終的には深層学習の適用は、エンベデッドビジョン製品の役割に大きな変化を生み出します。例えば、エンベデッドビジョン製品の目的は、単純な環境センシングから、よりスマートな、視覚によってガイドされる自動化された機能に進化するでしょう。典型的な例は、自律運転の技術的進歩です。低レベルの運転支援システムでは、エンベデッドビジョンは通常、検知やリマインダーなどの受動的な安全機能として使われます。より高度な自動運転システムでは、エンベデッドビジョンは能動的な安全機能により深く組み込まれ、迅速で信頼性の高い反応をドライバーに変わって行います。
これら二つの「変化」は、予見できる未来と、それに続く他の市場における「爆発点」の形成で、マシンビジョン市場の活気の高まりに着実に貢献するでしょう。
セキュリティと監視:セキュリティと監視は常にマシンビジョンの主要な適用市場です。そして、この10年以上、業界の発展を促進してきた主な推進力となっています。上述した、成長の勢いの二つの新しい要素は、この市場に大きな可能性を与えます。徐々に増加する市場であるという観点から、エンベデッドビジョン技術の開発は、スマートドアロックやビデオインターフォンなど消費者レベルの利用の可能性を高め、こうした用途の市場への浸透を確実にします。株式市場の観点からは、よりスマートなバージョンにアップグレードしたセキュリティと監視機器は、ただ「見る」のではなく「理解する」能力を備えるでしょう。大きな需要の可能性も見込めるステップアップです。 スマートマニュファクチャリング:産業用途がおそらくマシンビジョン市場の出発点とみなせるかもしれません。AI技術ベースのエンベデッドビジョンシステムのさらなる利用は、製造プロセス全体を不可避的にスマートにし、インダストリー4.0の設置と実現を加速します。例えば、かつては生産ラインのロボットは、限られた視覚認識力と判断能力のため、「おり」に閉じ込められていました。制約された数の特定の作業だけを、個々に実施するのが当たり前と考えられていました。スマートなエンベデッドビジョンは、協同作業するロボットによる未来の開発につながるでしょう。もっと複雑な作業内容で、人間と一緒に働く能力を持つでしょう。スマートマニュファクチャリングの理想の姿です。
図1:アヴネットが、ロボット配置とビデオ監視に幅広く適用できる物体認識のエンベデッドビジョン開発キットをリリース
自動運転:カーエレクトロニクスは、疑いの余地なく、急速に成長するエンベデッドビジョン市場です。ほとんどの自動運転向け回路では、エンベデッドビジョンシステムは、LiDARやmmWaveレーダーと組み合わせて外部の環境を検知する役割を担うだけでなく、疲労検査やハンド・ジェスチャーの認識に利用するなど、追加機能を提供するため車内のどこにでも使われ、インテリジェント・コックピットを現実にします。
図2:アヴネットのテレマティクスボックスが、先進の盗難防止とオンボード・ビジョン機能をサポート。自動車のOSとシームレスに同期して、インテリジェント・ドライビングを実現
この利用方法は自動車の安全性をまったく新しいレベルに引き上げ、個人の自動車オーナーから大きな関心を集めています。先進の盗難防止システムと内蔵カメラの監視機能のサポートによって、テレマティクスボックスが、車両に設置されたスマート機器からデータを収集・同期する、スマートゲートウェイシステムの基盤を提供します。自動車のOSとシームレスに通信し、車両を管理し追跡する機能は、多くの企業の関心を引くでしょう。
ドローン:ドローンと視覚処理には、当然のつながりがあります。新しいドローンの利用方法は、常に生まれています。市場規模は自動車と比較して大きく異なるものの、ドローンは特定のエンベデッドビジョン企業にとって、重要なニッチ市場になることはまず確実でしょう。
新規リテール:Amazon Goが現在この分野の先駆者であり、数百の組込カメラとバックエンドのビジョン処理システムを使用して、無人店で利用者の振る舞いを撮影して分析しています。Amazon Goの実験的な性質にも係わらず、また将来的に成功するかどうかの判断の難しさに係わらず、この試みはエンベデッドビジョンの小売業と商取引の分野を確実に開拓するでしょう。
エンターテイメントとゲーム:エンターテイメントとゲームでのエンベデッドビジョンの利用方法となると、Microsoft KinectとNintendo Wiiがまず思い浮かびます。しかし、これらのデバイスは、消費者レベルの利用を試す、エンベデッドビジョンの実験的な例でしかありません。最終的な目標は、エンベデッドビジョンの機能をスマートフォンと完璧に組み合わせることによって、いつかキラーアプリケーションを見つけ出すことです。 VR/AR:この2年に渡って経験したブームの後、VRとARは明らかにクールダウンしています。しかし、これら二つの技術は、未来の技術として人々のイメージに刻まれています。将来、人々が機械とどう接し、情報がどう伝達されるかについてのVRとARの影響は、計り知れません。VR/ARの基礎技術としてのエンベデッドビジョンは、終焉がすぐに訪れてなくなるということは確実にないでしょう。
上記が、将来のエンベデッドビジョン対象市場の概要調査に関する当社の結論です。技術ソリューションが向上し、成熟し続けるに伴い、エンベデッドビジョンは新しい可能性と予測できない利用方法で、確実に私たちを驚かせ続けるでしょう。疑いなく私たちは、現在、指数関数的に増加する市場成長の転換点にいます。
